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自転車を処分した話。

 

 今日自転車を処分してきた。上京してから使っている自転車は最早半身とも言うべき存在だったので、今日はその半身との別れについて書こうと思う。恐ろしい位中身の無い話になると思う。

自分が自転車を買ったのは大学に入ってすぐの事だ。アパートが大学まで徒歩で30分位掛かる位置にあった(今思うと本当に何であんなところに住んでいたのか理解できない)ので自転車の購入は最優先事項だった。潤沢な予算などある筈がなかったので1万円出せば買えるものにしようと思っていたのだが、何故か量販店やホームセンターではなく個人経営の自転車専門店に足を運んでしまった。個人経営の店はドン・キホーテに置いてあるような安価なものは余り置いていない。国産の自転車ばかり置いているので自然と高価な自転車が置いてある。体感で1万2千円以上のものばかりだったと思う。

上京してすぐの自分は、今思い出すと恥ずかしくなるような『チョロい客』だった。相手が親身になってくれていると感じると多少無茶でも応えてしまうし、断るのも憚られた。最初は1万円程度のものが欲しいといったのだが、店主に言いくるめられて予算は1万円から1万5千円、そして2万円まで膨らんでいった。

店主は「自転車は命を乗せる物」「住んでいた地形はアップダウンが多いので少ない力で動くヤツが良い」「空気入れをいつでも貸し出すので買う必要がない」と言って押しの弱い自分に自転車の何たるかを説いていた。店主の話は心なしか説得力があったので結局2万5千円するブリジストンの自転車を購入したのであった。その後も保険に加入したりでもう少し取られたと思う。何かあったら何時でも来て良いと言ってくれたのが、人とのつながりに飢えていた自分にはクリティカルヒットしていたのも良くなかったと思う。

これまでは中古のママチャリ位しか買い与えられていなかったのでそれなりの値段する自転車はとても乗りやすかった。ライトも勝手に付くし、坂道でもスイスイ進んだ。こんなに素晴らしい自転車が存在するのかと感動したし、毎日の通学が楽しかった。

自分と自転車の付き合いは大学2年の冬まで続いた。何度かパンクして修理に出したりしていたのだが、買う時にはあんなに親切だった店主の対応が気になるようになってきた。空気入れを借りに行く時も歯切れの悪い反応だったり、居留守に近い反応をされたこともある。パンクの修理に行くと乗り方が悪いと怒られた。自転車屋に行くのが億劫になった自分は自転車に乗る機会が増える=自転車がパンクしやすくなると考え、余り乗らないようにしていたと思う。その頃くらいからもっと大学まで近いところに住みたいと思っていたので引っ越しを検討するようになった。そして翌年の3月に晴れて隣駅から少し離れたところに引っ越すことが出来た。自転車屋には行けなくもない距離だったが、大学まで電車通学になったので自転車に乗る機会はかなり減ってしまった。無料の自転車置き場も無いので少し距離があっても買い物は徒歩で済ませた。そういうわけで日常生活の中で自転車の価値というものがかなり減少してしまったので整備もせずにアパートの自転車置き場に放置していてしまっていた。黄砂と雨風で買った時にピカピカだった自転車のフレームはボロボロになっていたし、パンクしても放ったらかしにしていた。3ヶ月乗らないなんてこともザラだったと思う。

今住んでいるアパートにも自転車は持ってきてはいた。パンクしてから全く触っていなかったので盗難にあって放置されていた自転車にしか見えなくなっていたが。家から10数分歩いたところに自転車屋があるのでそのうち修理に出そうと思っていたが、ここでも自転車の価値が余り高くなかったので今日という日まで引き伸ばしていた。

そして、今日自転車屋にパンクの修理に出しに行くと衝撃の事実を伝えられた。後輪のゴムはヒビが入っていて交換が必要で、前輪も必要に応じては交換する必要がある。チェーンが錆びて使い物にならないのでこれも交換する必要があったし、ブレーキーのゴムも痛みきっていた。店員に見積もりを出してもらったところ全部で1万3千円ほど掛かるという。パンクの修理なんだし千円位あれば済むだろうと高をくくっていた自分は急に13倍の値段が掛かると聞いて呆然とした。同じスペックの自転車を買い直すよりは安上がりだったが、それでも直してもらおうとはとても思えなかった。

そして当初パンク修理に掛かると思っていた千円を店員に支払って引き取って頂いた。1万3千円あればどれだけ酒を飲むことが出来るだろうか。答えは最初から出ていたのだ。自転車よさらば。